とはいえ、これはちょっとむずかしい。このお話で、アリスは6つくらいだろうけれど、でもじつは最近の日本の高校生でも知らないようなことをたくさん知っている。たとえば最初のところでうさぎの穴を落ちながら、アリスは地球のまん中までどのくらいあるかを、すぐにおもいだせる。あるいはフランス語もちょっとしゃべれちゃったりする。すごいね。むかしの人はいっぱい勉強したんだ。だからふつうに訳すと、すごくものしりな高校生もどきがしゃべってるみたいに聞こえちゃうんだ。
「そろそろ地球のまん中くらいにきたはず。えーと、そうなると四千マイルくらい落ちたことになる、のかな――」(つまりね、アリスは教室の授業で、こんなようなことをいくつか勉強していたわけ。で、このときはまわりにだれもいなかったから、もの知りなのをひけらかすにはあまりつごうがよくはなかったんだけれど、でもこうして暗唱してみると、いいれんしゅうにはなったってこと)「――そうね、きょりはそんなもんね――でもそれだと、緯度(いど)や経度(けいど)はどこらへんにきたのかしら」(アリスは緯度(いど)や経度(けいど)ってのがなんなのか、まるっきり見当もついてなかったけれど、でも口にだすのにかっこいい、えらそうなことばだと思ったわけね)